2020.03.17
ずっとずっと心待ちにしていた
サー・アンドラーシュ・シフのリサイタルを聴きに行ってきました!
新型コロナウィルスの影響で自粛モードが拡がり海外では外出禁止令なども出される中、
無事に開催されるか直前まで不安でしたが
大阪公演は無事決行され、素晴らしい音楽に触れる機会を失わずに済んだことを
本当に嬉しく思います。
当日の会場内は徹底的に感染対策がされていて
感染リスクをなくすためチケットのもぎりが無かったり、プログラムやCDの販売も無かったり。
そして至るところにアルコール消毒液が設置されていて、マスクの配布もありました。
さらに、開演直前には主催者の梶本眞秀さんより、ウィルス感染に対する私たち観客の不安を拭い
快適に演奏会楽しめるように直々のご挨拶がアナウンスされたりと
とにかく最善の配慮がされていました。
開演前から本当に心が暖まりました。
リサイタルの決行を決断してくださったことに本当に感謝感謝です。
さて!前置きが長くなりましたが
楽しみにしていたリサイタルは
本当に本当に素晴らしいものでした。
メンデルスゾーンのスコットランドソナタ
ベートーヴェンのソナタNo.24テレーゼ
ブラームスの8つのピアノ小品Op.76と
7つの幻想曲集Op.116
そして最後にバッハのイギリス組曲No.6という
超もりもりドイツプログラム🇩🇪
どれもこれも本当に素晴らしかったですが
特に感動したのはバッハです。
どこまでも緻密で、どこまでも美しく
そして計算し尽くされていて………
とてもシンプルだけど、深く深く心に残って
聴いた人はきっと一生忘れられない…
そんな演奏だったように思います。
ふと、学生の頃に恩師から言われた
「何もしない美しさを知りなさい」
という言葉を思い出しました。
私たちは、特にバロックや古典を弾くときに
あれこれ考えて何か面白くしないと!という思いに駆られることがありますが
楽譜とよく向き合い、根拠のない無駄な表情を付けることをやめ
楽譜に書いてあることだけを忠実に表現することこそが本当の意味での良い音楽に
繋がるんだということに気付き
それ以来楽譜に書かれていることの裏を読んだり、アナリーゼしたり
それに基づいて考えを巡らせたりする時間が増え、弾くことがさらに楽しくなり
喜びに変わっていくのをひしひしと感じたのを覚えています。
シフ様の演奏は、恩師のこの言葉の真意を改めて教えてくれるような
そして作曲家への敬意と音楽への慈しみの心が見えるような
そんな演奏でした。
こうして2時間のコンサートがあっという間にが終わってしまい
あまりに素晴らしすぎる演奏に軽く放心状態に陥ってしまいましたが
シフ様、さらりとアンコールに突入。
まず1曲目は、バッハのパルティータNo.4よりサラバンド。
先程のイギリス組曲に感動しすぎてまだ心がざわついている観客の様子を見透かしたような選曲。
ただひたすらに美しい音たちの流れに身を任せ、ゆったりと流れる時間の中で
このまま溶けてしまうんじゃないかと思うような幸福なひとときでした。
そしてブラームスのアルバムの小品、
メンデルスゾーンの無言歌より甘い思い出、紡ぎ歌と続き
次に始まったのはベートーヴェンのワルトシュタイン。
1楽章が終わり、少しの静寂があった後2楽章に入った瞬間
客席の高揚は間違いなく急上昇していたと思います。
絶対みんな「来た!キタコレーー!!」ってなってたはず笑
まさかとは思ったけど、本当に全楽章弾いて下さるとは………
これが噂のシフ様のアンコールか……と思いつつ
ただただ幸福感を噛み締めて聴いていました。
3楽章冒頭の清らかさといったらもう……シフ様はやっぱり神様でした…
観客総立ちのスタンディングオベーションの中
最後にシフ様が演奏し始めたのは、バッハの平均律第1巻のNo.1。
プレリュードもフーガもこの上ない美しさで、高揚していた心が少しクールダウンされ
心の原点に帰っていくような感じがしました。
観客の心に寄り添うような選曲で演奏されたアンコール、気が付けば1時間が経っていました。
アンコールというより、リサイタル第3部……
こんなに贅沢していいのかなって不安になるぐらい幸せであっという間の時間でした。
余談ですが、昨年秋に発売された彼の本
『Musik kommt aus der Stille ―音楽は静寂から生まれる―』の冒頭に
「はじめに静寂があり、静寂から音楽が生まれます。そして、音響と構造からなる
実にさまざまな現在進行形の奇跡が起こります。その後、ふたたび静寂が戻ってきます。」
という言葉があります。
これは「あなたにとって音楽とは、音楽の本質とは何ですか。」という
ジャーナリストの問いかけに対するシフの返答の一部なのですが
17日の演奏会では、
音楽が静寂から始まり静寂に帰ってゆくという
彼の音楽観の本質的な世界をどの曲でも体感することができ、感動も倍増でした。
特に、曲の終わりの最後の響きが消えるまで音を追いかける時間が本当に幸せでした。
そして皆が同じように耳を傾けていたので客席にも不思議な一体感が生まれていました。
この余韻にこの先しばらくは浸れそうです😌
あれは夢だったのかなと思うくらい、本当に素晴らしい演奏会でした・・・。
キャンセル待ちして手に入れたチケットは、前から5列目の超良席。
シフの表情、足、そしてこれは席に座って初めて気が付いたのですが
開いたピアノの屋根に手が映っていて、演奏している姿を余すことなく
目に焼き付けることができました!笑
コロナのせいで日に日に気が滅入り干からびそうな毎日でしたが
心が生き生きしてきてまた頑張りそうです!
古典弾きたい欲がすごい!!笑
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